楡の莢

柳積(りゅうせき)は貧しい暮らしの中、苦学していた。夜は木の葉を燃やして灯りの代わりとした。


ある夜、いつものように木の葉を燃やしながら勉強していると、窓の外から自分を呼ぶ声が聞こえた。


外に出てみると、五、六人が重そうな袋を背負って立っていた。袋を傾けると楡(にれ)の莢(さや)のようなものが転がり出た。


「あなたへの贈り物です。これで心おきなく勉強できますよ」


翌朝、見てみると、すべて漢の時代の古銭だった。数えてみると、十二万銭あった。


柳積は大金を得たおかげで、学業を修めることができた。宋の明帝の時に、その官位は太子舎人にまで上った。



(唐『独異志』)



※注:漢代の銭に「楡莢銭(ゆきょうせん)」という、名前の通り、形が楡の莢に似たものがあります。柳積に贈られた銭はこれでしょう。