2010-01-01から1ヶ月間の記事一覧

東晋の安帝の義煕(ぎき)年間(405 〜 418)のことである。琅[王邪](ろうや)郡(山東省)費県の王氏の家では、しばしば物が盗まれた。王氏 の主人は泥棒の仕業だと思い、戸締まりを厳重にしたが、それでも盗みはおさまらなかった。 しばらくして、主人…

鸚鵡

隴右(ろうゆう、青海省東端)に劉潜(りゅうせん)という富農がいた。劉潜には今年十五才になる娘が一人あるだけだった。類まれな美人で、結婚を申し込む者が跡を絶たなかった。劉潜は娘を非常に愛していたので、どこにも嫁がせず、手元に置いていた。 劉潜…

睦州(ぼくしゅう、現在の浙江省)刺史(州知事)李伯誠(りはくせい)に、元平という息子がいた。彼には生まれながらに左の股に小さな朱い痣があった。大暦五年(770)、元平は勉学のために親元を離れて東陽(浙江省)の寺院へ移り住んだ。 一年ほど経った…

人影

宜興(ぎこう、江蘇省)の陳宰冕(ちんさいべん)という人が富陽(ふよう、浙江省)の旅籠に泊まった。 夜、灯りを消して寝ようとすると、壁に人影が映って操り人形のように動いた。 陳宰冕は驚いて、枕を壁に投げつけた。旅籠の主人が物音を聞きつけて部屋…

紫姑神さま

紫姑神(しこしん)は民衆に広く信仰されている神である。言い伝えによるとある人の妾だったという。本妻に嫉妬され、いつも汚い仕事ばかりさせられていたが、あまりの辛さに耐えかねて正月の十五日に自ら死んでしまった。この薄命を哀れんだ人々は正月十五…

和尚と毒薬

昔々のことである。 一人の和尚が無性に蒸し餅を食べたくなった。そこで寺の前の店に行き、数十枚の蒸し餅を買い込んだ。ついでに蜂蜜も一壷買った。部屋に戻ると早速、蒸し餅に蜂蜜を塗って食べた。何枚か食べると満腹したので、残った分は鉢に入れ、蜂蜜と…