2012-02-01から1ヶ月間の記事一覧

丹陽の虎

丹陽(たんよう、江蘇省)の沈宗(しんそう)は県城で占いを生業としていた。 義熙(ぎき)年間(405〜418)に、左将軍の檀侯(だんこう)が丹陽の姑孰(こじゅく)に駐屯した。檀侯は狩りを好み、特に虎狩りを盛んに行なった。 ある日、沈宗のもとを一人の…

浦城(ほじょう、福建省)と永豊(えいほう、江西省)の県境の街道沿いに一軒の旅籠があった。厳州(浙江省)の商人が絹糸の荷をたずさえて、この旅籠に数日の間泊まった。旅籠の主人の妻は色好みで、商人を誘って関係を結んだ。 妻は夫に言った。 「あの客…

王季徳の棺

王季徳(おうきとく)は平江(へいこう)府(江蘇省)に赴任して一か月で死去した。部下達が金を出し合って棺を用意した。いざ納棺しようとすると、突然、死体がふくれ上がって納めることができなくなった。 この怪異な現象に皆が首をひねっていると、王季徳…

貧士の予言

王衍(おうえん)は二十歳の時、受験のため明州(浙江省)から上京した。 合格発表の前日、金のない王衍は遊びに行くこともできず、一人、旅籠(はたご)に残っていた。そこへ、どこからか貧しそうな身なりの士人がやって来てていねいにお辞儀をした。てっき…

壮絶孝子

庚子の年(康煕五十九年、1720)の中元の日、私(作者、金埴のこと)は河間(河北省)の北の二十里鋪というところに泊まった。旅の埃を落そうとたらいで水浴びをしていると、突然、触れ回る大声が聞こえてきた。 山東の孝子が母を背負って災害から避けてここ…

狐総管

都の西単牌楼(せいたんはいろう)に大きな貸し家があった。狐が棲みついたために、借り手がなかった。家賃を得られないことに腹を立てた家主は、自ら貸し家に出向いて狐を罵った。 その晩、家主の幼い子供がいなくなった。家族総出で探し回ったところ、子供…