2011-01-01から1ヶ月間の記事一覧

独角

独角は巴郡(はぐん、四川省)の人である。数百歳になると思われたが、その名前はすっかり忘れ去られていた。 頭のてっぺんに角が一本生えていることから、独角(どくかく)と呼ばれていた。 独角は何年もの間、姿を消していたかと思うとふらりと舞い戻って…

任氏(後編)

鄭が家に帰って間もなく韋が訪ねてきた。 「昨日は一体どうしたんだ。飲み屋でずっと待ちぼうけさせられたぞ」 となじった。鄭はひたすら謝って、任氏のことには一言も触れなかった。ただ、任氏の艶やかな姿が思い起こされ、何とかもう一度会えないものかと…

任氏(前編)

唐の玄宗(げんそう)の御代に韋崟(いぎん)という人がいた。母が王族の出身で若い頃から豪放磊落(らいらく)、酒好き、女好きでいわゆる侠気(おとこぎ)に富む気性であった。その従姉妹の婿に鄭六という者がいたが、この人も少年の時から武芸を習い、や…