陳道人
建康(南京)の陳道人は検死役と親しくつき合い、いつも酒をおごっていた。
ある時、検死役が、
「あんたにはいつもよくしてもらってるから、何かお返しがしたい。望みを言ってくれ」
とたずねると、
「十七、八歳の健康な男の死体がほしいのですよ」
とのこと。検死役は、
「それならお安いご用だ。死体が出たら、真っ先に知らせるよ」
と請け合った。
それからしばらく経ったある晩、劉太尉が侍童を打ち殺した。検死役はその死体をもらい受けてきた。陳道人は湯を沸かして死体を洗い清めると、自分の頭巾と衣服を着せ、寝台の上に趺坐(ふざ)させた。そして、自分もその前に趺坐した。
夜が明けて検死役が様子を見に行くと、陳道人は息絶え、侍童は息を吹き返していた。
(宋『癸辛雑識』)