亡き妻の怨み
華亭(かてい、江蘇省)の衛寛夫(えいかんふ)は妻を亡くし、一年足らずで劉氏を後妻に迎えた。
すると、しばしば先妻の霊が下女について怨み言を述べ、家の中でも怪異が起こるようになった。ある者は悲しそうなため息を聞いたと言い、先妻の姿を見かけたと言う者もいた。
衛寛夫の家には貴重品は収めた櫃(ひつ)があり、いつもしっかり鍵がかけてあった。ある日、櫃の中から蛙が鳴き騒ぐ声が聞こえたが、すぐに静かになった。不審に思って中身を確かめると、すっかり空になっていた。
また、こんなこともあった。銭を千枚、地面にばらまいたところ、すべて真っ直ぐに立った。まるで目に見えない指に支えられているかのようであった。驚いているうちに、銭は地面に倒れた。
やがて劉氏に子供が生まれたが、ほどなくしてその子供が病気になった。巫女を呼ぶと、先妻の祟りだという。祈祷をして手を尽くしたが、子供の病気は治らなかった。
怒った衛寛夫は先妻の位牌を斧で割ろうとした。衛寛夫が斧を振り下ろすと、子供が大声で泣き叫んだ。三度、斧が振り下ろされ、そのたびに子供は泣き叫んだ。位牌が割れた時、子供も死んだ。
その後、怪異は二度と起こらなかった。
(宋『異聞総録』)
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