銅人の怪

処士の張[糸眞](ちょうしん)は早くに妻を江陵(こうりょう、湖北省)で亡くした。その後、すぐに妾を入れたのだが、これがたいそう艶麗(えんれい)であった。


妾を迎えて十日足らずのある日、料理番の下女が竃(かまど)の下で小さな銅人を見つけた。大きさは一寸(当時の一寸は約 3.1センチ)あまりで、火のような色をしている。見ているうちに銅人はムクムクと大きくなり、やがて一丈(当時の一丈は約 3.1メートル)の大きさになり、姿かたちもすっかり変わってしまった。


巨大になった銅人は張[糸眞]の部屋に駆け込むと、部屋にいた妾を捕まえて食べた。妾は髪一筋残さず、食い尽くされてしまった。妾を食べ終わると、銅人はどんどん縮んでいった。


もとの大きさに戻った銅人は竃の下に姿を消した。



(唐『聞奇録』)



中国百物語

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