伝屍病

隋の煬帝(ようだい)の大業末年(六一七)のことである。洛陽(河南省)の民家で伝屍病(でんしびょう)が発生し、数人いた兄弟が相次いで死んだ。


後に、ある人が伝屍病にかかって死んだ。その人が今にも息を引き取りそうになった時、家族は枕元で顔を覆って泣いていた。その時、弟がふと顔を上げると、死者の口から何やら飛び出すのが見えた。それはすぐに自分の口に飛び込んだ。それから弟は病みつき、一年あまり後に死んだ。


彼は死ぬ間際に、妻子にこう言い残した。


「この病は、あの時、私が見たものが引き起こしたものだ。私が死んだら、頭を切り開いて中に何かいないか調べてくれ。そうすれば、病の原因がわかるだろう」


死後、息子が頭の中を調べてみると、奇妙な生き物がいた。形は魚に似てあったが、二つの頭を持ち、全身が肉の鱗に覆われていた。


息子がそれを鉢に放したところ、絶えず飛び跳ねた。色々な食べ物を与えてみると、食べはしないのだが、すべて水と化した。毒薬を与えると、これも溶けてなくなった。


ちょうど夏の盛りで藍が青々と茂り、寺では僧侶が水辺でこの藍から染料を作っていた。息子はそこへ行き、藍を一かたまりもらってきた。藍を鉢に入れてみると、奇妙な生き物はたちどころに水と化した。


伝えるところによれば、藍はのどのつかえにも効くそうである。



(唐『広古今五行記』)