頭痛
曲阿(きょくあ、江蘇省)の彭星野(ほうせいや)に秦瞻(しんせん)という人がいた。
ある時、昼寝をしているとどこからかなまぐさい臭いがしてきた。はっと目覚めてみれば 、目の前に蛇がいた。蛇は秦瞻の顔近くにはい寄ると、鼻の孔(あな)にもぐり込んだ。そのまま鼻の中を上っていき、脳に届いて止まった。どうやらとぐろを巻いたようである。途端に頭の中が冷たくなった。耳を澄ますと、頭の中から何かをすするような音が聞こえてきた。
数日後、蛇は入った時と同様、鼻の孔から出ていった。しばらくして戻ってきたので、手ぬぐいで鼻と口を覆ってみた。すると、蛇は入ることができずにしばらくうろうろしていたが、そのままどこかへ行ってしまった。
この後、秦瞻は体に何の変調もきたさなかった。ただ、慢性の頭痛に悩まされるようになった。
(唐『広古今五行記』)
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