白老

侍御史(じぎょし)の盧樞(ろすう)がしてくれた話である。


親戚に建州刺史となった人がいた。ある夜、あまりの暑さに寝つかれず、庭に下りて月でも眺めることにした。寝室を出たところで、西の階の下から人の笑い声が聞こえてきた。


 そっと忍び足で近づいてみると、階の下に白衣をまとった七、八人の男女が車座になっていて酒を飲んでいた。どれも身の丈は一尺(約30センチ)にも満たず、筵(むしろ)や食器もその体に応じてとても小さい。しばらく楽しげに酒を酌み交わしていたが、その中の一人がこのようなことを言い出した。


「今夜は本当に楽しいなあ。しかし、白老(はくろう)がもうすぐやって来る。どうしたらいいだろう」


そして悲しそうにため息をついた。すると、座中の男女もさめざめと泣き出した。皆はひとしきり泣いた後、溝の中へ姿を消した。


後にこの人はよそへ転出し、新任の刺史が赴任してきた。刺史は猫を飼っており、名を「白老」といった。


刺史が公邸に入ると、猫の白老は西の階の下へまっしぐらに駆け寄った。そして、土をひっかいて、七、八匹の鼠を掘り出した。いずれも白い鼠であった。


白老は鼠をすべて殺してしまった。



(宋『稽神録』)