尻の肉

福建のある県で十四歳の少年が殺される事件が起きた。犯人はすぐに捕らえられた。


県令が死体を検分すると、首から下に数か所の傷があった。ここまでは普通の死体であったが、不思議なことに尻の穴を中心に肉が大きくえぐり取られていた。仔細に調べると、尻の穴に小刀をさし込んで、えぐり取ったものと思われた。


県令がこのことを問いただすと、犯人は平然と答えた。


「えぐり取ったんです」


えぐり取った肉はどこにあるのかとたずねると、


「煮て食べてしまいました」


「食べただと? うそをつくな」


犯人は悪びれる様子も見せず、淡々と語った。


「うそではありません。私はあの子の美貌にほれ、金をえさに誘って、深い仲になりました。食べるものから着るものまで、すべて私が面倒を見てやりました。あの子に捨てられるのではないかと、いつも不安で、気に入られようと必死でした。そのために財産を使い果たしてしまいました。両親には罵られ、妻には恨まれました。身内の誰も私を相手にしなくなりました。それでも、あの子さえいてくれれば平気でした。なのに、あの子は私をあっさりと捨てたのです。はじめのうちは理由をつけて私を避けるだけだったのですが、次第にあからさまに拒むようになりました。無理に言うことをきかせようとしたら、抵抗されて殴られました。あまりにひどい仕打ちに、私はあの子が許せませんでした。そして、あの子をだまして連れ出し、不意をついて刺し殺したのです。死体を見ているうちに、色々なことが思い出されました。私が破産して、家族に見捨てられたのは、すべてこの子のせいなのだ。ただ殺すだけでは気がすまない。そこで、尻の肉をえぐって、煮て食べたら、ようやくすっきりしました。今は死んでも思い残すことはありません」


何度たずねても、犯人の供述は変わらなかった。


あまりにも内容がわいせつなので、県令は文書から供述を削除し、ただ、痴情による殺人とだけ記した。



(清『蛍窓異草』)