南康(なんこう)ウ都県(江西省)の西の川沿いに洞窟があった。夢口穴(むこうけつ)と呼ばれていた。


昔、ある船頭が全身黄色づくめの衣をまとった男と出会った。男は黄色い瓜を入れた籠を二つ担いでいた。


「夢口穴まで乗せてくれんかね」


男はそう言って船に乗り込んできた。夢口穴の近くに来ると、


「これが船賃だ」

と言って皿の上へ唾を吐きかけて岸に上がり、まっすぐに夢口穴へ入って行った。


船頭ははじめのうちは非常に腹を立てたが、男は夢口穴の中へ入って行ったのを見て、常人ではないことを知った。皿を見ると、唾はすべて黄金に変わっていた。



六朝『任[日方]述異記』)



游仙枕―中国昔話大集 (アルファポリス文庫)

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