劉玄

南朝の宋のことである。中山(河北省)の劉玄(りゅうげん)という人が越城(えつじょう)に住んでいた。


ある夜、黒い袴子(ズボン)をはいた人が火を取りに来た。その顔には目も鼻もなく、ただ草がぼうぼうに生えているだけであった。


不思議に思って、占い師にたずねてみると、


「これはあなたの先代の時のものです。時を経れば鬼魅(きみ)に変じて、人を殺すようになります。瞳ができる前に、除いておしまいなさい」


とのこと。


劉玄は占い師の言葉に従い、妖怪を捕らえて縛り上げた。そして、刀で切り刻んだところ、枕に変じた。それは祖父が愛用していた枕であった。



(唐『集異記』)