石仏の怪

山西陽曲(ようきょく)県の山中で不思議な声を聞く者があった。


「出ようか、出るまいか。出ようか、出るまいか……」


この声は数日続いたが、返事をする者はいなかった。ある時、一人の農夫が通りかかってふざけて答えてみた。


「出てこいよ」


するとたちまち山の一角が崩れて、削ったかのような一体の石仏が現れた。頭から足の先まで端然として、真に神々しいばかりであっった。村人が噂を聞き付けて三々五々集まってきた。


ある者が言うには、昔、古寺があったが、廃虚となって久しく土中に埋もれていた、それがたまたま土砂崩れで外に現われたのであろう、とのこと。しかし、寺のあったことを裏づける瓦礫の類は一切なく、すべて山の土砂であった。



(清『原李耳載』)



游仙枕―中国昔話大集 (アルファポリス文庫)

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