灯下の鬼
金の大定年間(1161〜1189)のことである。忻州(きんしゅう、山西省)の賀端中(がたんちゅう)が宣聖廟(せんせいびょう、孔子廟のこと)に物忌みのために泊まった。
その夜、灯火の下に大きな青い鬼が現われた。髪は逆立ち、目はかがり火のように爛々と光り、口からは炎を吐き出していた。
驚いた賀端中は頭から蒲団をひっかぶって、寝台の下に突っ伏した。
翌朝、日が高くなってから仲間が呼びに来て、賀端中はようやく立ち上がったのだが、まだ震えが止まらなかった。
賀端中から事情を聞いた仲間が部屋を見渡してみると、甕の中の水が空になっていた。硯(すずり)の水も、おまるの中身も空になっていた。昨夜の鬼は「渇鬼(かっき)」で、それが飲んだものと思われた。
その年、賀端中は試験に合格し、進士となった。
(金『続夷堅志』)
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