五代

賄賂

五代の後唐のことである。 鎮州(河北省)の劉方遇(りゅうほうぐう)の家は裕福で、数十万の財産を蓄えていた。妻の田氏は早く死に、その妹は尼僧となっていたが、ひんぱんに方遇の家の出入りしていた。方遇はこの義妹を還俗させて、後添いに迎えた。 妻の…

鸚鵡の告発

長安の楊崇義(ようすうぎ)は先祖代々の富豪であった。その豪奢な暮らしぶりは、王侯をもしのぐものがあった。崇義の妻劉氏は類まれな美女であった。劉氏は隣家の李掩(りえん)と密通していた。劉氏はいつしか李掩と離れられなくなり、邪魔な夫を殺してし…

冥府の鏡

青城(四川省)の室園山の僧侶、彦先(げんせん)は有徳の僧侶として人々の尊崇を集めていた。しかし、彦先には秘密があった。彼はかつて戒律を破ったことがあった。 ある時、彦先は室園山を離れて蜀州へ向かった。その途中、天王院に泊まった夜、病でもない…

自白

遠くへ旅に出て長く家を空けていた男がいた。久しぶりに家に帰ると、妻が殺されていた。首は持ち去られていたが、衣服から妻とわかった。妻の実家に知らせに走ったところ、妻の両親は男が殺したものと思い、取り押さえ て役所につき出した。 「婿が娘を殺し…

座像

廬山(ろざん、江西省)山中に落星潭(らくせいたん)という淵がある。この淵は水が深く淀んで魚がよく捕れ、近隣の者にとって恰好の釣り場だった。 五代十国の呉の太和年間(929〜934)のことである。一人の釣り人がここで釣り糸を垂らしていた。突然、ぐい…

ふぐ

ふぐは体に虎のような斑(ぶち)がある。世間では生煮えを食べると必ず死ぬ、と言われている。 饒州(じょうしゅう、江西省)の呉生の家は裕福で、妻の実家も裕福であった。夫婦仲は睦まじく、喧嘩をしたことは一度もなかった。 ある日、呉生は酔っ払って帰…