犬姦

青州(せいしゅう、山東省)に一人の商人がいた。他郷へ商売に出かけることが多く、ひとたび家を出れば一年は戻らなかったため、妻はいつも一人寝の寂しさを耐え忍ばなければならなかった。外聞をはばかって情人を持つこともできず、鬱々(うつうつ)と楽しまない日が続いた。


商人の家では一匹の白い牡犬を飼っており、妻にたいそうなついていた。寂しさに耐えかねた妻はこれを手なずけて交わった。犬の方も何度か繰り返すうちに、すっかり慣れてしまった。


ある日、商人が戻ってきた。妻とともに寝室に入ったところ、犬がしきしに扉に体当たりをしてくる。不審に思って扉を開けると、犬が飛び込んできた。犬は商人を噛み殺すと、いつものように妻と交わった。


商人の死は事故として処理されたのだが、村人達の多くがその死に疑問を抱いた。後に、妻が情人と共謀して犬に夫を噛み殺させたのではないか、と役所に訴え出る者があり、妻は捕らえられた。しかし、妻は首枷(くびかせ)をかけられ、厳しく尋問されたが、情人の存在を認めない。また、役所の方でも色々と調べてはみたのだが、情人らしい男は見つからなかった。そこで、仕方がなく、犬を引っくくって連れてくることにした。犬は妻の姿を見るなり駆け寄り、着物をかみ裂いて交わろうとした。これには妻も申し開きの立てようがなかった。


妻と犬は上級の役所へ送られることとなり、二人の役人がその任にあたった。途中、妻と犬の噂を聞きつけた人々が集まり、交合を見物しようとして役人に銭を握らせた。役人は見物人の前に妻と犬を引き出して交わらせた。行く先々で噂を聞きつけた人々が数百人もつめかけ、二人の役人は大いに儲けた。


上級の役所に送られた妻と犬は、八つ裂きのの刑に処された。



(清『聊斎志異』)